Photo : Yukio Arikawa
神楽坂は花街の面影が残る路地を有する特別な街である。飯田橋から毘沙門天までの急な上り坂のほぼ中間に位置する間口5メートル程の小さな土地に地下1階地上8階建てのビルを設計することになった。用途は全て飲食店を中心にしたテナントビルである。
商業ビルである為に目立つ存在でなければならない。しかし、この街の中に違和感のあるビルを建てるべきではない。あくまでも、目を引く存在でありつつ邪魔にならないオブジェの様な建物にしたかった。そこで、町並みや空の変化を適度に映し出す効果のある透明硝子を階段とバルコニーの手摺に使っている。出来るだけ硝子を浮かせて使いたかったので、下端をテンポイントのみで固定する方法を採用した。これは未だ日本では前例が無いようで、価格も含め様々な問題をクリヤーしなくてはならなかった。
しかし、その効果は大きく、宝石の様に美しいフォルムのビルに仕上がっている。また、歩道部分のアプローチは狭い間口を感じさせず、広がりと奥行きを感じる計画とした。これは造園における坪庭の手法にも通じるものである。今は両隣が低い建物で塔状に突出しているが、いずれは両側をビルに挟まれるであろう、その時こそこの手法は生きてくる。
- 所在地
- 東京都新宿区神楽坂
- 施工
- 東京土建工業株式会社
- 敷地面積
- 73.05㎡
- 建築面積
- 45.86㎡
- 地階床面積
- 54.63㎡
- 1階床面積
- 35.30㎡
- 2階~7階床面積
- 43.50㎡
- 8階床面積
- 12.87㎡
- 延べ床面積
- 363.80㎡