敷地は南青山の中心に位置し、間口に対し奥行きが2倍の形状である。その奥行きを利用し、地下室にラフェラーリという特別な車を自走で下ろす計画である。そして、それがクライアントの一番の要望であった。
かなり以前になるが、フェラーリF50を自走で地下に下ろした経験があったので、何とかなる自信はあった。しかし、カタログやWEBデータに最低地上高の記載が無く、ディーラーも把握していなかった。そのため、他のフェラーリのデーターを参考にして9センチで設計を進めた。図面がほぼ完成する直前に、車がイタリアから届き、実測したら5センチしかなく、その上ホイールベースや前後のオーバーハングが相当長かったため、改めて車路の断面設計をやり直さなくてはならなくなった。
複雑なS字曲線を組み合わせることで、何とかギリギリでクリアーすることが出来た。安全を期するために、浦和の工場で車路の断面を原寸大でつくり、車の断面模型を走らせて、クリアーしていることを確認した。
プランとしては中心に8メートル角の中庭(池)を設け、採光と通風を各部屋に送る計画になっている。この中庭は私が設計をする上で最も大切にしている空間の広がりや、自然の移ろいを各部屋に投影させる、重要な要素となっている。
また、中庭や水盤に大きなガラス開口を設け、地下室に水落ちの波でゆらゆらと揺らぐ光を落とす仕掛を設けた。
また、1階の天井高に合わせて一面をミラー貼りにすることで、広がりと、エッシャー的な錯覚で、夜になると特に不思議な映像を楽しむことができる。
地下室にはラフェラーリを中心にしたホビールームやワインセラーや和室、ホームシアター、30畳の倉庫がある。1階はリビングを中心にしたパブリックゾーンで、中庭や2階の寝室の吹き抜けが、リビングに豊かな空間の広がりをもたらしている。
2階に寝室とゲストルーム、3階は寝室という構成である。また、各寝室にはそれぞれ専用の洗面バストイレが付属している。各フロアをガラス製の透明感のある階段で繋いでおり、屋上へは玄関から見上げると半分せり出した、ステンレスとガラス製のオブジェの様な螺旋階段を使用する。
この住宅は全てが都市型の邸宅に相応しいつくりとなっている。
- 敷地面積
- 319.27㎡
- 建築面積
- 183.54㎡
- 延べ床面積
- 708.84㎡
- 構造・規模
- RC造地下1階地上3階建て
- 最高高さ
- 9.952m
- 掲載誌
- モダンリビング238号