MESSAGE
私は福岡県で造園業を営む家の長男として生まれ育ちました。幼いころから手を動かして物を作ることが好きで、細部までこだわりながら熱中していたことを思い出します。気分転換がしたくなると、決まって向かったのは実家の近くの河川敷。そこで飽きずに眺めた美しい青空と小川の景色が私の原風景といえるかもしれません。
東京の大学で造園を学び、一度は家業に入るも、さまざまな葛藤を経て再び上京。20代後半で、運命ともいえる住宅建築との出会いがありました。自分が本当にやりたかった仕事はこれなのだと、遅まきながら気づいたのです。そこから学問の場ではなく、現場で、身体で建築を習得していったプロセスは、建築家としては少し異色といえるかもしれません。しかし2001年に独立するまで、多種多様なプロジェクトに携わらせていただき、鍛えられたことが私の礎になっています。
私はRC造の都市型住宅を多く手がけていますが、設計において常に大切にしているテーマは、日々の暮らしの中で自然を身近に感じられること。光やそこから生まれる影、風を意識的に取り入れることで、コンクリートが織りなす建築美と心地よい自然との調和を試みています。ただし、建築家としての自分の個性を出すよりも、それぞれの建主様が紡いでこられた暮らしや価値観、敷地の特徴に寄り添うことを重視しています。結果、導かれた住まいの解に、ひとつとして同じものはありません。
住宅建築はいつの時代も、人々の豊かな生活を具現化する役割を果たしてきました。今後はコロナ禍によってニューノーマル時代を迎え、私たちは住まいの新しいスタイルを構築していくことになるでしょう。人が集う時間のあり方、パーソナルな空間のあり方、内と外のつながりのあり方。そういった課題に建築家としてどう応えていくか。私の挑戦は続いていきます。
